2019/10/18公開

「仕事の好き嫌い」よりも「役立ち方の好き嫌い」で──JTB、エン人材教育財団、LITALICO、3社の教育事業を聞いた:未来の先生展レポート

9月15日に開催された日本最大級の教育イベント「未来の先生展」。チョットークを運営するtyottoも、3年連続で参加し、ワークショップを開催しました。

ワークショップの開催レポートはこちら>

[10年後の学校どうなる?──高校生の進行で、大人40人が答えのない問いを考える:未来の先生展]

このように、同イベントでは、教育分野に力を入れる各企業がブースを展開しています。数ある展示、ブースの中からチョットーク編集部が面白いと感じた3社の取り組みを紹介します。

旅行業から教育にアプローチ:JTB

まず紹介するのは、大手旅行会社「JTB」です。

一見すると、教育との関わりが見えにくいかもしれませんが、実は修学旅行の企画など、かねてから、学校との連携を進めています。そんなJTBが仕掛ける教育分野でのアプローチとは?

「思い出以上の価値」を求められる時代──「修学旅行探求ノート」が旅行をアクティブラーニングに変える

 

JTBが開発する「修学旅行探求ノート」、東京学芸大学の森本康彦教授との共同開発

修学旅行は本来、「授業」の一環で、文部科学省も学校に対して「学習指導要領、学校行事等指導書等に示すところにより、そのねらいを明確にし、その内容をじゆうぶんに吟味して、教育的効果を高めるようにすること」と通達しています。(文部省初等中等教育局長通達より抜粋

ただ「楽しい旅行」で終わらせない。

そのために、JTBは、オリジナルのワークブックを用いた修学旅行の事前/事後の学習設計を提案しています。旅行前から旅行後までのプロセスに「探求的な学び」の要素を取り入れたもので、これまでの「ただ旅行計画を作る、感想文を書く」だけで終わらせない工夫をしています。

こうした取り組みの背景を、教育事業ソリューションセンターキャリア教室事業室キャリア教育コーディネーターの早川勝重さんと同センター営業開発プロデューサーの小野田一樹さんに聞きました。

 

案内をしてくれたJTB教育事業ソリューションセンターキャリア教室事業室キャリア教育コーディネーターの早川さん(写真右)と同センター営業開発プロデューサーの小野田さん(写真左)

「最近は学校行事について『楽しければいい』という時代ではなくなっています。特に修学旅行はほとんどの場合オーダーメイドなので、家族で行く旅行よりも高価になることが多いんです。だからこそ、保護者や学校からも、思い出以上の価値、学びの場にしたいというニーズが高まっています。

そうした中で、盛り上がりを見せている『探究学習(編集部注:アクティブラーニング(主体的な学び)の一つ)』を旅行の中に取り入れました」(小野田さん)

近年、教育現場ではアクティブラーニングの取り組みが目立っていますが、非日常的な行事である修学旅行は、こうした文脈の中で、特にその重要性が高まっていくかもしれません。

人気アナウンサー登場! 日テレのドラマ制作班と共同開発した「CAS-DRP(キャリアアクシスサポート ドラマ ロールプレイ)」

 

JTBが日テレのドラマ制作班と共同開発した「CAS-DRP(キャリアアクシスサポート ドラマ ロールプレイ)」のフライヤー

JTBでは、数年ほど前から、旅行以外の切り口でも教育プログラムを展開して、他の旅行会社との差別化を図っています。その一つが「CAS-DRP(キャリアアクシスサポート ドラマ ロールプレイ)」です。

これは、日本テレビとコラボ開発したプログラムで、高校生が社会人基礎力を身につけることを目的に、社会に出てから直面するであろう課題を疑似体験する全6回のプログラム。

強みは、日本テレビとのコラボだからこそ実現できたそのエンタメ性です。映像コンテンツを用いてワークショップを進行するものですが、その映像を制作するのは日本テレビのドラマ制作班。さらに出演は同社の人気アナウンサーたちです。アナウンサーが「社内コミュニケーション」「仕事とプライベート」「取引先とのトラブル」といった実際の現場で発生する社会人の課題を問題提起し、その後、高校生たちはオリジナル教材を活用してワークを進めていきます。

プログラムの手応えを小野田さんは次のように話します。

「日本テレビでは『世界一受けたい授業』やドラマ『3年A組』など、特に学校の中で起こりうる課題へ着目しているテレビ局です。

日テレeduいう教育部署もつくっていて、ドラマの中で問いを立てるようなことを得意としています。やはり、生徒もドラマに引き込まれるんですよね。ドラマを通じて課題や取り組みに入りやすくなりますし、でもそれをドラマの世界で完結させずに、リアルに引き戻して授業の中でディスカッションするという構成です。受講した生徒の反応も良いです」

こうしたプログラム開発の背景について、企業と学生のミスマッチといった課題を挙げます。

「新卒学生の離職率は『3年で3割』と言われます。就職のミスマッチが多いんですよね。それを極力無くして、どうせなら、自分がやりたい仕事につくために高校3年間や大学4年間を使ってほしいという思いから開発しています」

まだ数校の高校での導入ということでしたが、今後、一層こうしたサービスの活用が進んでいくかもしれません。

会社選びは「仕事の好き嫌い」よりも「役立ち方の好き嫌い」で:エン人材教育財団

人材サービス等を展開するエン・ジャパン。同社とブランドを同じくして、非営利事業を行うために立ち上げた別組織が「一般財団法人エン人材教育財団(以下、教育財団)」です。

教育財団では、学生や社会人向けにオリジナルの教育プログラムを提供しています。

未来を見通すエクスポネンシャル思考とは?──社会課題解決型人材育成スクール「en+Lab(エンラボ)」

 

「en+Lab」ウェブサイトより

en+Labは「公益性と私益性を兼ね備えた事業とその担い手を育てる」ことを目指した事業立ち上げを行うスクールで、18歳から35歳が対象です。

「興味開発」や「事業立ち上げ」といった複数のプログラムで構成されており、それぞれのコンテンツに関して、外部の専門家や企業とタッグを組む緻密な設計となっています。

 

同プログラムのカリキュラム(en+Labウェブサイトより引用)

プログラムの説明を聞いていると、その中で聞きなれない名称を耳にしました。

「エクスポネンシャル思考」──。いったいどのようなものでしょうか?

一般的に、事業を立ち上げる上で、未来の社会がどう変化するかをイメージすることは欠かせません。テクノロジーの発達や社会情勢の変化の中で、どんな困りごとが生まれるか、そこに事業の種があります。

こうした将来の見通しを立てる上で大切な考え方が「エクスポネンシャル思考」だと言います。en+Labで取り入れるこの思考法について、担当者の中本さんに教えてもらいました。

「シンギュラリティ(編集部注:AIが人間の能力を超えるとされる地点、「技術的特異点」とも)などが注目を集めるように、技術の進化は、指数関数的に、ある1点を超えた瞬間に、とんでもないスピードで進歩します。ですから、これからの世の中に何が必要かを考える時に、『今』だけを見ていても答えは出ません。その今は1ヶ月後にはとんでもなく古い話になっている可能性があるからです。

そこで、エクスポネンシャル思考を活用することにより、単に今の積み上げで未来を考えるのではなく、その進歩のスピード感をリアルに体感しながら、事業の立ち上げを行うことができます」(中本さん)

この進化のスピードを感じることは「日本だけを見ていては難しい」とのことで、プログラムでは、海外の研究論文やテクノロジーの進化をインプットに取り入れているそうです。

加速度的に早くなる社会の変化。その中で課題を見つけ、解決のために行動することは、事業を立ち上げるか否かにかかわらず非常に重要な視点です。そのためにも、このような考え方は、とても有用なものになりそうです。

エクスポネンシャル思考については、紹介するこちらの書籍などでも紹介されています。興味のある人は見てみると良いかもしれません。

「仕事の好き嫌い」よりも「役立ち方の好き嫌い」で仕事選びを

教育財団では、このほか「en Career Creation Lab」という大学生向けのプログラムも開催しています。この取り組みの中で、大学生と触れる機会が多いという担当者の中本さんは、学生の会社選びに対して、次のように指摘します。

「『仕事の好き嫌い』よりも『役立ち方の好き嫌い』『誰に対しての好き嫌い』で選んだほうが良いということを、学生にはよく話しています。

例えば、旅行が好きな人が旅行会社に入っても、毎日、仕事では旅行と向き合うわけではありません。日々向き合うのは、旅行に行こうとするお客さんです。1日中ずっとその人たちと向き合う仕事ですから、その人たちを好きになれるか、興味を持てるか、そしてその人たちにそういう役立ち方をしたいのか。そこを明確に言語化して、企業選びをしてほしいです。そうして選んだ仕事では、きっと入社後も毎日が充実するのではないでしょうか」(中本さん)

プログラムに参加する大学生からは、「仕事って人の役に立つんですね」といった感想が寄せられることが多いそうです。人の役に立ちたいという思いを持つ学生が増えている中で、そうした思いと仕事の間の橋渡しを行うプログラムとして、その価値はますます高まっていくように思います。

そしてプログラムの設計の細やかさはもちろんですが、お話を聞いていると、人を育てることへの誠実さと熱い思いを感じさせられました。

発達障害の支援からスタート、現在は3事業を柱に「自分らしく」を目指す:LITALICO

 

事業を紹介してくれたLITALICO人材開発部の木村彰宏さん

LITALICO(リタリコ)は「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、現在は「ワークス」「ワンダー」「ジュニア」と主に3つの事業部で事業を展開しています。

 

LITALICOが展開する事業(同社ウェブサイトより引用)、事業もさることながら親しみやすく統一感あるデザインも目を引く

障害を持つ人への就労支援を行うワークスは77拠点、幼児から高校生までを対象にした学習教室のジュニアは100拠点以上、またプログラミング教育などものづくりを中心に据えたワンダーが17拠点と、全国でその規模を拡大しています。

「子どもが小さい頃から、自分らしく学べる環境をつくる」

担当してくれたLITALICOジュニア事業部の木村彰宏さんに、こうした事業展開の背景を聞きました。

「発達障害や学習障害をお持ちの人が鬱(うつ)病や統合失調症などになる傾向が高いんです。一つの要因が、幼少期に失敗体験を積んでしまうことで、『変だ』とか『気持ち悪い』と言われて、いじめなどに遭い、不登校になるケースが多々あります。

LITALICOはもともとワークスの事業からスタートしていて、障害を抱えた大人の向けの就労支援をしていました。すると、ワークスに通う障害者の約7割が精神障害だったんです。そうした状況を踏まえて、これはやはり幼少期からのいろいろな課題があるなということで、子ども時代に自分らしく学べる環境をつくろうと立ち上がりました」

こうした状況を解決するために誕生したのが学習教室を展開するLITALICOジュニアでした。そしてそこでの取り組みが、「LITALICOワンダー」へもつながったと言います。

「学び方は人それぞれだと考えていて、自分らしい学び方を届けるために、もともとはジュニアの中でものづくりやプログラミングを扱っていました。すると、その中の一定数の子どもたちが、プログラミングやパソコンを使った学びとの相性が良いことに気づいたんです。

そういう子たちの強みを活かして学べる教室を作ろうということでワンダーができました」(木村さん)

ワンダーは、2020年からの小学校でのプログラミング教育必修化なども相まって、最近ではますますその注目度を高めています。

その他にも、LITALICOでは現在、学校の中で研修を実施したり、ジュニアのスペシャリストの先生を保育園や幼稚園、学童、児童養護施設、少年院などに派遣したり、多方面で理念の実現のために、活動しています。同分野で、日本一の規模を誇るLITALICO。今後の取り組みにも、目が離せません。


教育分野で価値を届けている3社の取り組みを紹介しました。共通するのは、根底にある思いの強さ。そして、それを事業の中に丁寧に反映する誠実さです。

興味を持った人は、ぜひ各企業の取り組みを調べてみてください。

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