2018/11/09公開

水の沸騰と蒸発の違いとは?~物質の三態変化と温度・圧力の関係~

 「物質の三態」の単元に出てくる「沸騰」というキーワード。問題を解くときに必要な「沸点」は、沸騰している液体の温度です。

 私たちは、お湯を沸かすなどして、日常的に水の沸騰をよく目にします。そもそも「沸騰」ってなんでしょうか。「蒸発」とどう違うのでしょう。

 結論から言うと「沸騰とは、液体内部からも蒸発が起こっている状態」と定義されます。

 また、水が沸騰している時は、熱をどんなに加えてもその水の温度はそれ以上、上がりません。なぜでしょう。

 こちらは、問題「状態変化と熱量」によく出題されます。沸騰している水では、何が起こっているのでしょうか。

 「沸騰」をキーワードに、「物質の三態」の単元の問題に必要な内容を詳しく見ていきましょう。

 

 

  1. 物質の三態と蒸発

      私たちに欠かせない、身近な物質である水には、固体の氷、液体の水、気体の水蒸気の状態があり、これを三態と呼びます。その三態変化は下図のように呼ばれます。


    つまり「蒸発」とは三態変化の一つ、「液体が気体になること」です。

     

  2. 温度と熱運動

      私達の身の回りでは、水は温度が上がるごとに

      氷(固体) → 水(液体) → 水蒸気(気体) と変化しています。※

     

     ここで、物質をミクロの視点で考えてみます。

     この世界は、原子と呼ばれる粒子からできています。

      例えば、水つまりHOは、水素原子H2つと酸素原子O一つが結合した分子です。

     

     そして、「粒子はその温度にあった熱運動を行い、温度が上昇すると熱運動は激しくなる」

         「粒子は互いに引き合っている」 の2つが同時に起こり、三態が決まっています。

     

     固体である氷では、互いに粒子は引き付け合って整然と並び、その場で振動しています。

     液体である水は、互いに粒子は引き合ってはいますが、自由にその位置を変えることができます。

     気体の水蒸気は、熱運動が大きすぎるために、互いにあまり引き合わず、空間を飛び回っています

     
      例えば、水分子を学校の学生さん一人ひとりとイメージしてみると

       氷は授業中

        みんな席についている状態。その場では動くこともありますが、大きくは動きません。

       水は休み時間

        多くの人は自由に席を離れ、場所が入れ替わったりしています

       水蒸気は放課後

        それぞれが、教室から離れ、帰宅したり部活に移動したりしています。

     

     実際には、これら粒子は互いに衝突しあい、粒子ごとに運動量が変化します。

     温度によって、粒子の熱運動の激しさは変わります。

      粒子の熱運動が停止した状態、この時の温度が「絶対零度」です。-273[℃] = 0[K]ですね。

     

  3. 熱運動と蒸発 

     突然ですがここで問題です。

     Q.水が蒸発する温度は、何度でしょうか?

    ・・・100℃ と答えてしまいそうですね。じつは A.決まった温度はない。 が正解です。

     

     寒い冬でも、洗濯物は乾きます。干した洗濯物が100℃になって乾いている。なんてナンセンスです。水の沸騰する温度は決まっていますが、水は、どんな温度でも蒸発し、気体になります。

     

     熱運動で考えると、水分子が互いに衝突しあい、大きな熱運動を持った水分子が、水面から飛び出し気体となる。これが蒸発です。

     外部からのエネルギー、つまり接している物質の熱運動によって、水分子の熱運動が大きくなる場合もあります。ビーカーや鍋などで水を加熱する場合、加熱された底面(ガラスやスチール)粒子の熱運動(振動)が水の熱運動を大きくし、そこで蒸発が起こります。底面から泡となった水蒸気が浮き上がるこの現象はよく目にされていますね。固体からだけでなく、気体粒子によって、熱運動が大きくなる場合ももちろんあります。

      沸騰は水である液体の内部でも、気体となる十分な熱運動をもった水分子が水から水蒸気となる、つまり蒸発が起こっている状態です。

      ※氷でも昇華が起こります。冷凍室の氷がしばらく使わないでいると、小さくなったのを見たことがありませんか?また、冷凍室の霜を見たことがあると思います。氷の表面の水分子が気体に衝突され熱運動が大きくなり、氷から離れて気体の水蒸気へ。逆に、水蒸気が壁面に衝突したときに熱運動を失い、そこで固体の氷(霜)となっているのです。

     

  4. 沸点と大気圧

      物質が沸騰する温度を「沸点」と呼びます。なお、融解する温度は「融点」です。

     これらの温度は、純物質で一定となっています。

     

     ここでまた、もうひとつ問題です。

     Q.水の沸点は、何度でしょうか?

    ・・・こんどこそ100℃ でしょうか。 正確には A.1気圧(1atm:1013hPa)のもとで100℃  が正解です。

    物質の状態は、温度と圧力によって、三態の間で変化します 

     気体の水蒸気の圧力を、水蒸気圧と呼びます。また、地上の大気がもつ圧力を、大気圧と呼び、その大きさは1気圧(1atm:1013hPa)です。また、水面にかかる大気圧は、水の内部の圧力、水圧に加算されてます。水深によって水圧は大きくなりますが、ここでは便宜上水中での圧力は水面の圧力、つまり大気圧と同じとします。

     いま、ある水の粒子、つまり水分子が大きな熱運動をもち、液体内部で気体になった(蒸発した)とします。このとき、「水蒸気圧」が、「大気圧(=水圧)」よりも小さければ、その気体は押し潰されてしまいます。つまり、この状況では蒸発できないことになります。

     つまり、水の内部で蒸発するためには、その水蒸気圧が、その時の大気圧と等しくなる必要があります。よって、水蒸気圧が大気圧に達したとき、沸騰が起こるといえるのです。「水分子は100℃ で1気圧(1atm:1013hPa)の水蒸気圧となる」のです。

     そのため気圧が低い山頂では沸点が下がります。富士山山頂では87~88℃、世界最高峰エベレストでは70℃ほどとなります。圧力鍋は内部の圧力を上げることで、沸点が120℃となり高温での調理を可能にしています。

     

     強力な真空ポンプを用い、水の周りの空気を抜いていくと、大気圧が下がることで常温で沸騰が起こり始めます。そのままにしておくと、蒸発にともなって気化熱が奪われ、水温が低下し、最後には凍りつきながら沸騰し、液体が完全になくなるまで沸騰は続きます。

     

     水が沸騰しているとき、加熱しても水温が一定(1気圧で100℃)となるのは、そのエネルギーが水から水蒸気に変わる状態変化にすべて利用されているからです。

     水が蒸発するときには、蒸発熱(気化熱ともいう)が必要となります(水では40.8kJ/mol)。水が沸騰しているときに加えられた熱は、蒸発熱として、つまり水分子が引き合う力を振り切るエネルギーに利用されています。

     

     同様に、融解しているとき、加熱しても水温が一定(0℃)となるのは、そのエネルギーが氷から水に変わる状態変化にすべて利用されているからです。氷が入っている飲み物が、氷がなくなった途端にぬるく感じたことがあると思います。外からの熱が、氷を融解させるためだけに使われていたのが、氷がなくなった途端、飲み物の温度を上げ始めてしまうためです。

     

  5. 問題 

    1) 固体から液体への変化をなんと呼ぶか。また、液体から固体への変化は何か。

    2) 液体から気体への変化をなんと呼ぶか。また、気体から液体への変化は何か。

    3) 水蒸気圧とは何か。

    4) 沸騰とは、どんな現象か。

    5) 20℃の水を一様に加熱したとき、ある温度になったとき、加熱しても温度が上昇しなくなる。この時の温度をなんと呼ぶか。 

    6) 上の5)のとき、温度が上昇しない理由を説明せよ。

 

 身近な現象である沸騰。お湯を沸かす時などに、水分子の振る舞いや、大気圧との関係などをイメージしてみると面白いかもしれません。そんなふうに、物事を化学の目で捉える癖をつけていきましょう。化学への興味が深まります。

 

 
   答)1) 融解,凝固 2) 蒸発,凝集 3) 水蒸気の持つ圧力 4) 液体内部からも、蒸発が起こる現象 5) 沸点 6) 加えられた熱エネルギーがすべて水の蒸発に使われたから。

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