勉強法 十分なのに必要じゃない!? 必要条件・十分条件の見分け方!

十分なのに必要じゃない!? 必要条件・十分条件の見分け方!

「必要条件」「十分条件」は難しくない!

 高等学校数学Iで、「んんっ!?」と首をひねる分野の一つに「命題と論証」があります。「数学」という言葉を真に受けてしまった人は論理学の分野は、「これホントに数学なの!?」と思ってしまうはずです。小学校算数や中学校数学では計算、計算的思考がメインとなるため、この分野のような論理的思考は慣れていない生徒もいると思います。ここでは「必要条件」「十分条件」の見分け方、考え方について説明していきたいと思います。意味もわからず必要条件、十分条件という言葉だけを暗記してもムダです。言葉だけを見れば難しく感じるのも無理はありませんが、内容自体はいたってシンプルな話となっています。

そもそも「必要」「十分」という言葉は数学用語?

私たちは日常生活でよく必要、十分、という言葉を使います。

「今日の試験には、ずっと使っていたあの鉛筆が必要なんだ。」

「私は寝るときにはあの布団と枕があれば十分だ。」

こんな感じです。みなさん使いますよね。数学での「必要条件」「十分条件」も同じ意味だと思ってもらっていいです。

  • 必要→これがないと困る。ゼッタイないとまずい。
  • 十分→ありあまるほどに文句なしの状態。

このイメージが必要条件、十分条件の言葉にも当てはまります。では、こんな命題を考えてみましょう。

「Xがネコのとき、Xは動物である。」

・・・・・・当たり前じゃないですか? ネコは動物ですものね。つまり、Xがネコであることは、Xが動物であるための「十分条件」になります。当たり前すぎるから十分ということなのです。

では、この命題の逆はどうでしょうか?

「Xが動物のとき、Xはネコである。」

動物なんて山ほど種類があります。ネコとは限りません。でもネコに対して動物であるという条件は必要です。動物でないネコはいませんからね。よって、Xが動物であることは、Xがネコであるための必要条件となります。当たり前すぎることなのか、その条件がないと困るのか、で判断することができます。

もう1つ例をあげましょうか。少し数字を交えていきますよ。

「Xが整数のとき、Xは自然数である。」

この命題はパッと見でも偽だということがわかります。整数はマイナスの可能性がありますものね。この逆は成り立ちます。自然数は整数なのは当たり前です。

この命題にたいして、整数ということは、自然数というものを作り上げるためにゼッタイ「必要」です。つまり必要条件ということになります。

まとめると、 A→B で真 AはBであるための十分条件  A→Bが偽で、その逆B→Aが真 AはBであるための必要条件

また、必要でもあり十分でもある条件を「必要十分条件」といいます。

数学の問題では…

例えば、「ABXが0以上の整数とすると、AX<BX のとき、A<Bである」という命題を考えてみましょう。この命題が真のとき十分条件、この逆が真のとき必要条件を意識します。X≠0のとき、AX<BXの両辺をXで割ってあげるとA<Bが導けます。よって、十分条件 ①

この逆は「A<Bのとき、AX<BXである」となりますが、X=0の可能性がありますので偽となります。X=0を両辺にかけたら0=0になってしまいますよね。つまり必要条件となりません。②

答は①②より「十分条件であって、必要条件でない」となります。十分すぎて、必要とは限らない。これも日常生活にあふれていますね。

 

では、もう1問、「0≦X≦2 のとき、 0<X<2である」 こういう問題は頻出です。イコールがとれただけでわからなくなってしまうのです。

この手の問題は数直線に描いて考えるとわかりやすいです。0≦X≦2の範囲の中に0<X<2の範囲がスッポリ含まれているのがわかりますか。これを部分集合といいますが、

スッポリ含まれている場合にはゼッタイに成り立つので真といえます。つまりこの命題は十分条件①

この逆は 0<X<2の範囲から0≦X≦2の範囲が0と2の分だけはみ出てしまっているので偽。つまり必要条件ではない②

これも①②より「十分条件であって、必要条件でない」となります。

 

こんな感じでいろいろ範囲をつくって訓練していくことをおすすめします。

「0<X<2のとき、1<X<3である」→必要条件でも十分条件でもない。互いに重なっていない部分がある。

「(x+3)(x-5)<0のとき、-3<x<5である」→不等式を解いたのだから互いに成り立つ。よって必要十分条件。

「 |x|>0のとき、x>0である」→x<0の可能性のあるから十分条件ではない。その逆は成り立つ。よって必要条件。

 

あえて、先ほどみたいに数字でないものにおいてもよいでしょう。

「野球をする人は、プロ野球選手である」→そんなことわかりません。少年野球の子供かもしれませんし。でもその逆、プロ野球選手は野球をします。

これも、プロ野球選手にとって「野球をする人」というのは必要な条件になります。よって、「野球をする人」は「プロ野球選手である」ための必要条件となります。

 

少しアタマをひねる必要は出てくると思うのですが、イメージトレーニングも大切です。

「テストで合格するレベルの人は、テスト範囲外も勉強します。」 テストにしてみれば、テスト範囲外の勉強は十分であって必要でないのです。

しかし、そんな余裕を見せる前に、「テストで合格するレベル」になっていることが「必要」なのです。

よって、テストで合格するレベルになっているということは、テスト範囲外も勉強するための必要条件ということになります。もちろん、あくまでも数学的に考えた場合ですが…

 

迷う場合は、「出発十分(じっぷん)前」と覚えましょう。A→Bの命題で、このまま真だったらAはBであるための十分条件となります。出発進行~☆この矢印のまま命題が

進行すれば十分条件ですよ~☆

難しく考え、難しく問題をとらえるのは非常にラクなことです。しかし一度そう見てしまうと抜け出すのは困難です。いかにわかりやすい形でインプットしていくかがカギになります。