勉強法 自民党の「党三役」とは。政経受験者なら答えられて当たり前!

自民党の「党三役」とは。政経受験者なら答えられて当たり前!

自民党の党三役とは?

 1955年から現在まで、合計5年ほどの期間を除いて政権与党であり続けた自民党、自由民主党の組織について勉強してみましょう。ニュースをよく見ていると聞くことがあるのが、この党三役。大きな人事異動として報道されることがありますが、さてこれはいったいなに?ということで、順に見ていきましょう。

 

幹事長 ――選挙を取り仕切る第一人者

 一番重要なのは、この幹事長です。どのような仕事をするのかといえば、あらゆる選挙を取り仕切ること、です。候補者の選定から、広報のやり方、そして実際の選挙期間ともなれば誰をどこに応援演説にいかせるか、などを取り仕切ります。もちろん、どこに重点的にお金をつぎ込むか、ということも担っているわけですね。まさに、選挙の実務者であるわけです。

 政治家が政治家であるためには、選挙で当選しなければなりません。そのため、選挙に受かるかどうかを左右するこのポストは、とても重要な役職です。特に、1993年以来の政治改革では中選挙区制から小選挙区制へと衆議院の選挙方式が変わりました。中選挙区制のもとでは、同一選挙区で同じ党の複数の候補者が出ることが当たり前にありましたから、各候補者が頼りにするのは党ではなく、自分の所属する派閥でした。しかし、小選挙区制のもとではそうではありません。小選挙区制での選挙は個人vs個人ではなく、政党vs政党の戦いです。そのため自分の所属する政党からどれだけ支援を受けられるかが大事になるのですが、そのためには党からその選挙区の代表としての公認をもらわなければなりません。公認するかどうかを左右するのが、幹事長なんですね。

 これだけ重要なポストである幹事長に誰を任命するかは、頭の痛い問題です。有力者でなければ選挙を取り仕切ることなどできなくて選挙で勝てない。一方で、有力者というのは自分の競争相手でもあるわけですから、競争相手に手柄を立てさせるわけにもいかない。このバランス感覚が求められます。実際、いまの安倍晋三総理大臣は自分の最大のライバルである石破茂を幹事長から目立たない大臣ポストへと異動させました。これは、競争相手が手柄を立てたり影響力を増したりするのを防ごうとするものですね。一方で小泉純一郎元総理大臣は2005年の郵政選挙という大一番に向けて、自分の忠実な腹心である武部勤を幹事長にしました。

 

総務会長 ――法案審議の要

 次に紹介するのは総務会長です。自民党には総務会という、意思決定機関があります。ここでの議論と採決を経て、それぞれの法案に対して党としてどのような態度で臨むかを決めます。ここで決まったことについては、各議員は必ず従わなければなりません。つまり、国会で採決にあたって党として統一的な行動をとる党議拘束の基礎になるわけです。

 というわけで、総務会長が総務会の意見をまとめられないと、政党として一致した行動ができなくなってしまうわけです。しかもそこでは全会一致が慣行となっているため、反対者を事前に説得しておかなければなりません。総務会長の腕の見せ所ですね。

 

政調会長 ――専門分野のとりまとめ

 3つ目に紹介するのは政調会長です。各国会議員は本会議では全ての法案の採決に関わるもののそれ以外の時にはいくつかの委員会に属して分野ごとの法案審議に携わります。そのため、議員ごとに専門分野があるのです。この、専門分野を同じくする議員が集まって議論をしたり、意見調整をしたり、外部から専門家を招いて勉強会をしたりするのが、政務調査会の専門部会なのです。そういった専門家集団のとりまとめをするのが政調会長、というわけですね。それぞれに専門分野を持つ国会議員は、その観点に沿った主張をしますから、ときにはそれが他の専門分野の議員の主張や、官僚組織の主張と対立することがあります。これが行きすぎないようにしないといけないわけですね。

 

実はほかにも?

 以上が自民党の党三役ですが、他にも重要なポストがあります。以上の党三役は基本的には衆議院議員が就任します。一方、参議院議員は独自に集団を形成しています。2000年以降は政権与党といえども参議院では安定的に多数を確保しているとも限りませんから、参議院議員の強力をきちんと取り付けないと法案が通らない可能性があったのです。そのため、参議院議員集団にも配慮することが求められました。

 そこで、党四役とも五役ともいう言葉が登場しました。そこに含まれるのは、参議院議員集団をとりまとめる参議院議員会長。そして、参議院幹事長。そのときどきの政治状況に応じて、ここにも目配りが為されることもあります。

 

他の政党にも類似の役職が

 では、自民党以外の政党ではどうなのでしょうか?これが、まったく別の組織を持っているということはあまりありません。民主党でも、公明党でも、概ねどの政党でも幹事長や政調会長といった類似の名前のポストがあります。これは、創立者が自民党の組織を参考にしたのか、あるいは交渉の必要上から生じたのかは定かではありませんが、いずれにせよ各党ともに組織形態は類似しているというわけですね。それゆえに、自民党の組織についてよく押さえておくことは大事になります。

 

例題

 新進気鋭の若手政治家、小泉進次郎が務めている農林部会長とは、党三役のどれの下に位置するか?

 

解答解説

 農林部会とは、政務調査会の専門部会の1つです。そのため、これは政調会長の下にあるというわけですね。よって正解は政調会長、でした。