自分と社会の「ちょっと」先を考えるチョットーク

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2020/02/21公開

仕事も未来も正解はない、まずは「タピオカが流行ったワケ」から考えよう

未来ってどうやって予測するの?

新井:NTTデータは、IT分野をリードする立場として、時代をいち早く読んで、その価値を生み出しているわけですが、そういう能力って、企業に限らず、個人にとっても大切だと思うんです。どうやったら、まだ見ぬ未来を読むことができるようになるんでしょうか?

下垣:NTTデータでは毎年、社会や技術のトレンドが今後10年、20年でどう変わっていくのか、予言的に発表しています。先端技術を研究している「NTT DATA Technology Foresight」というチームが取り組んでいるものです。

NTT DATA Technology Foresightウェブサイトより

高見:これも、時代の読み方にコツがあるというよりも、意外と愚直に専門家に話を聞きに言ったり、自分たちで調べたりしながら分析しています。

新井:データを入力したら、パッと分析結果が出てくるってわけではないんですね。

下垣:もっともっと泥臭いです。

僕たちはよくお客さんからは「ねえドラえもんなんか出してよ」みたいなノリで「こういうのないの?」と聞かれるんです(笑)。それを一緒になって考える中で、超未来の話と、5年10年先の話、それから現実の話を常に同時に見据えながら、お客さんに価値を提供していきます。

タピオカが流行った理由を考えるのもいい

写真奥:tyotto代表取締役の新井光樹

新井:先の時代を読むために、学生にもできることって何かないですか? 明日からすぐにでも始められるような。

下垣:身近で好奇心を持ったことについて、考えてみることだと思います。「なんでタピオカこんな流行ってるの?」みたいなことでもよくて、答えが出なくても、一瞬でもいいから実験的に考えてみると良いと思います。「流行り」の裏側を探ろうとする好奇心は大切です。

高見:興味のあることから始められるといいですね。

あとはきちんと疑うこと。例えば教科書だって誰かが作ったものだから、絶対的に正しいかどうかはわからないですし。

下垣:そういえば、僕が大学院の研究室に入ってすぐ言われたのが、「教科書を疑ってかかれ」でした。教授からしたら、所詮自分と同じような人たちが本を書いているってだけだから、それが正しいかどうかもわからないんですよね。

考える癖をつけてもらいたいです。

写真左:NTTデータ人事本部下垣徹さん、右:同高見暁さん

新井:それを聞くと、つくづく学校教育って真逆ですね。決まったものをインプットして、それを適切に処理することが大事で、つまりは教科書を信じて、理解し、インプットしなさいっていうものじゃないですか。

下垣:ただ、僕の場合は基礎力の上に応用力があるという風に理解しています。なので、思考力を養うために、その土台として、暗記などを通して基礎的な力を徹底的に鍛えるのも、一つの方向性としてアリな気がします。

でも、勉強ができる、というのがある一つの見方でしかないことはよく理解しておくべきかな。よく「あの人頭がいいよね」って表現しますけど、頭がいいの軸もいろいろあると思うんです。松本人志さんと中曽根康弘元首相の頭がいいって全く違うし、いろいろなベクトルがある中で、学校の勉強はある断面で切り取った一つの軸でしかないとは思います。

「ググればわかる」から知識がいらないわけじゃない

下垣:今ってググれば何でも答えが出てくる世界なんですけど、専門性を考えるといちいちググってられないっていう部分もあると思うんです。

ついこの間、Twitterを見てて面白いと思ったことがありました。ある女性の理系学生が教授に「なんでもググったらわかるのになんで知識を覚える必要があるのか」と聞いたんです。するとその教授は、「車の運転中に、いちいち本を見て標識の意味を確認しますか? そういうことです」と。これは非常に腑に落ちまして。

結局、専門性を求められる場面では、脊髄反射的にすぐできるかどうかがポイントなんです。僕も学生の頃は、随分長いことアルバイトで塾の先生をとかやっていて、高校生に勉強を教えていました。確かに今では、テクノロジーが発達してきて、知識自体の価値が薄れているかもしれないし、そういう便利さはどんどん活用すべきだとは思いますが、それだけに頼るのはなんか違うなと。根っこの部分は普遍なんじゃないかなって気はします。

みんな、正解と効率を求めすぎ

高見:私の場合、学生とお話をしていて感じるのは、正解を求め過ぎだなということ。しかも、その正解に至るまでの道のりにしても、効率を過度に意識しがちだと感じます。

それってさっき話していたような時代の流れに逆行する姿勢で、本当は時代の流れを読んで自分で考えなきゃいけないのに、「それで正解は何ですか?」っていうようなスタンスになっている気がします。

下垣:実際にインターンを見ていてもそれは強く思いました。インターンのプログラムの中で、チームに分かれて競争してもらったんですけど、優秀な子ですら終わってから「本当はどうやっていたらうちのチーム優勝できたんですか?」って答えを聞きにきていました。

高見:必ずしも答えがないVUCAな時代で生きていく上で、自分で考えることってとても大事なことなので、そこをせずに思考停止してしまっているのは危険だし、自由に考えることって本来楽しいはずなのでもったいないなと思います。

新井:先日、就活生向けのカウンセラーさんと話す機会があったんですけど、高校受験にしろ大学受験にしろ「こうやったら受かるよ」っていうノウハウがあるものだからその癖が就活でも抜けないんだと思います。「どうやったら受かるんですか?」みたいな。

高見:どうやったら受かるのか、って1番悲しい質問ですね……。そこがゴールじゃないのに、すごく近視眼的になってしまっていて。

新井:それこそタピオカの件もそうですけど、答えが出なくても考えることが大切なんですよね。


下垣:例えばハーバード大学のMBA(編集部注:経営学修士のこと、経営学の大学院修士課程修了で授与される学位)とか行ったら、答えのないビジネスシーンに対して2年間ひたすら考えるわけです。そういう力はやっぱり大事だと思います。

新井:とはいえ、仕事においても「正解」ってあると思うんです。例えばシステムの不良があったらそれをどうするのかって、答えがあるような気もする。それでもやはり考えることが重要なのはなぜでしょうか?

下垣:セオリーや原理原則はもちろんあります。どんな技術にもロジックがあって、ここまではいけるけどこれは無理、みたいに決まっている部分はありますからね。

高見:仕事のレイヤー(層)によるんだと思います。仕事の依頼があって「これを作るぞ」と決まってからは、ある程度は正解がある世界になるかもしれません。けど、そもそもお客さんとどんな未来を作っていくのか、を考える時には、正解というよりもお客さんと一緒に創造していかなければいけません。そういう意味で、仕事の上流は「正解のない世界」と言えるかも。

新しい価値を生み出すことは、まだ存在しないものを作ることと同じですから、ただ正解を求めていたら、すでにあるものしか生み出せません。

命がかかる場面でも、AIに最終判断を任せられますか?

新井:ちょっと話は変わりますけど、今後シンギュラリティ(AIが人間の能力を超えるとされる時点のこと、技術的特異点と訳される)が来るみたいに言われますよね。2030年には、人間の仕事の49%がAIに取って代わられるとか。

最先端のテクノロジーを扱う会社にいるお二人としては、そう言ったものをどう捉えていますか?

下垣:うーん難しいなぁ……。あるっちゃあるかなって気はするんですけど、この間の台風19号の被害を見たときに、AIではどうにもならない世界って普通にあるなと感じました。

置き換わる部分も大量にあるとは思いますが、それはAIなら人がやるよりも何%か効率的、くらいの話で。そこまではいけると思いますが、最終的な判断は人間がやることになると思っています。

AIにしろロボットにしろ、人間をラクにしてくれる道具ではあるけど、100%置き換わることはないかなというのが持論です。というのも、最後は人が判断しないと責任が取れないと思うんです。お金や、もっといえば命がかかっている判断を全て機械任せにして、リスクも全部機械がとって。万が一被害が出たら自分が全額払いますって、人間にそんなことは言えないんじゃないかなって。

新井:技術的には、そういう判断もAIでできるかもしれないけど、そこに対して人間が任せることができないってことですね。

下垣:そう。例えば株の売買で、「オンライントレーディング」といって、株の売買を、自動的にコンピュータに任せるものがあるんですけど、株が暴落した時にその責任というか、損害は人間がかぶるわけですよね。それがちょっとしたお金だったらまだいいかもしれないけど、莫大な金額や、命のようなものでも同じようにAIに任せきることができるかって考えると、多くの人は難しいと思います。

人為的なミスを減らすみたいなのには使えるとは思いますけど、人間がいきなり駆逐されるっていうのはないかなぁってというのが自分の持論です。

人間の感情はやっぱりなくならないのかな。芸術作品や心地よい音楽をAIで自動的に作ったりするけど、自動生成だと確率的になっていくと思うので、「飽き」が発生するんじゃないかな。気まぐれな感情の起伏みたいなのをAIに理解させるのはかなり難しいんじゃないかなと思います。

でも、そういう「たられば」の世界を調べるのは楽しいですよね。答えが無いものですし。

高見:逆に高校生に聞くとどういう意見が出るんですかね?

新井:うちの塾でも、こういう問いを高校生に考えてもらうワークショップを開催しますが、正直なところ、「あ、そうなんだ」っていう反応がほとんどなんですよね。「それ本当?」って疑うようなイメージはあまりなくて。

それこそ「10年後にこれくらいの仕事がなくなるらしいよ」って言っても「あ、なくなるんですね」くらい他人事というか。まぁ10年後だしね。みたいなある意味楽観的な見方です。

変化の最先端へ、一段飛ばしはできないから、その時々の変化を乗り越えることが大切

新井:仮に、シンギュラリティが来るとしたら、お二人もそれに備えて働き方や自分のスタイルを変えていこうと思いますか?

下垣:やはりそれなりに時代に応じてスタイルを変えると思います。いきなり20年後になってから備えても遅いので、その時々に目の前で起こる変化を一歩ずつ乗り越えていくのが大切かな。

例えばITの世界でも、「ビッグデータ」と呼ばれるものが盛り上がって、その次に「AI」の波が来ました。けど、ビッグデータに乗らずに、いきなり一段飛ばしでAIの波に乗ることは難しいんです。その時々の変化に適応できた人だけが、その次の最先端に行けるので、その時代の波を追い続けることが大事になります。

新井:なるほど。

高見:私は、将来どこかのタイミングで、世の中に必要な労働量に対して人間の手が余る瞬間がやって来ると思っています。貨幣経済も絶対ではないと思います。そうなった時に、自分の生きる意味みたいなものを考えたりします。

今はお金ややりがいを求めて仕事をしていても、人口が減って、自動化できる仕事も増えていけば、働かなくても生きていける時代が来るかもしれません。そういうときに、「わたしだったらどう生きるかな」っていうのを考えるんです。で、わたしの場合はそれでもやっぱり働くんだろうなと思っていて。ということは、やっぱり働くことそのものに意味を感じているんですよね。そういうことを考えると自分の価値観があぶり出されて面白いですよ。

新井:働かなくていい世界ができたら働かない人も多そうですよね。

下垣:考えていくと「幸せってなんだろう」ってなりますね。働かなくてもいい状態でも働きたい人と、だったらゲームをしていたいって人といて、それぞれの純粋な根っこの部分に立ち帰れる気がします。

新井:結局は自分がどうありたいかに行き着きますね。

高見:縛りがある方が選択がラクだと思うんです。仮に「偏差値が高い大学に行くのが正しい」っていう風に決まっていればそれを目指せばいいだけだけど、たくさんの選択肢の中から、自分で自由に考えるのって、楽しくもあるけど大変でもある。

下垣:確かに。そういうことを考えられる人だけが残っていくのかもしれませんね。社会に対して何も生産しない人は、究極的には社会にとって意味がないものとして淘汰されるのかもしれない。ちょっと酷な話かもしれないけど。

新井:でもその通りですよね。今の話を聞いて、僕自身もめちゃくちゃ考えますし。

学生を見ていると、考えるための精神力や体力が弱い気がします。多くの学生は正解がないとわかった瞬間にその問いを考えることから逃げてしまいがち。だから、自分が何をやりたいのかを聞かれてもわからないんですよね。

逆に探究心のある子はどんどん上に行っているから、まずは考えるきっかけを提供してあげたいと思っています。

下垣:勉強とか、答えのある問いに追われてしまいがちですからね。

高見:ただし、必ずしも悪いことではないと思います。社会を支えているのは、やるべきことをやっている人たちですから。でもみんなそうだからといって、流されるがままにそっちに行っちゃうのはもったいないとは思いますが。

新井:自分がそうありたいならそれでいいと思うんですよね。


下垣:今後どうなるかはわかりませんが、日本がそういう多様性を受け入れられなければ、どんどん海外に行く人も出てくるでしょうね。ITの力で世界の距離は縮まっていますから。

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自分と社会の「ちょっと」先を考えるメディア、チョットーク編集部です。

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